<p> 大学院博士過程修了者たちのその後を追跡調査した結果によると、「死亡・失踪者」の割合は9.1%。これは平成21年度のデータである。異常な数字だ。税金をつかって養成された若き知識人たちが社会から「消えている」のだ。</p> <p> 仕事がない博士たちはこれまで戦ってこなかった。なぜなのだろうか。</p> <p> 年収200万円程度の困窮生活を、社会に訴えたとしよう。そのとき、教え子たちは、非常勤講師をしている自分たちの教師が、尊敬するに値しない人 間である、社会の敗残者であることを知ってしまう。それが恐ろしくて、当事者たちは沈黙し、社会問題化されることはなかった。当事者同士の連帯もなかっ た。こうして問題は放置され、絶望する博士たちが増え続けていく。負の連鎖が止まらなかったのである。</p>
— <a href="http://booklog.kinokuniya.co.jp/masaishii/archives/2010/09/post_116.html" target="_blank">フリーライター・石井政之の書評ブログ : 『ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院』水月昭道(光文社)</a>