一日一日を、たっぷりと生きて行くより他は無い。明日のことを思い煩うな。明日は明日みずから思い煩わん。きょう一日を、よろこび、努め、人には優しくして暮したい。青空もこのごろは、ばかに綺麗だ。舟を浮べたいくらい綺麗だ。山茶花の花びらは、桜貝。音たてて散っている。こんなに見事な花びらだったかと、ことしはじめて驚いている。何もかも、なつかしいのだ。煙草一本吸うのにも、泣いてみたいくらいの感謝の念で吸っている。まさか、本当には泣かない。思わず微笑しているという程の意味である。
— <p>太宰治―新郎</p> <p>via: <a href="http://caisuizi705.tumblr.com/" target="_blank">caisuizi705</a>: <a href="http://nemoi.tumblr.com/" target="_blank">nemoi</a></p> <p>(via <a href="http://drhaniwa.tumblr.com/" target="_blank">drhaniwa</a>)</p>