<p>●チベット仏教の特色</p> <p> それでは、チベット仏教が本当に日本人のために役だつか否か、それを検証するために、日本の仏教との比較を行なってみましょう。そうした過程を通じて、チベット仏教の特色が鮮明に浮かびあがってきます。ただ、そのような特色−つまり日本の仏教との相異点−がいかに際だっていたとしても、やはりチベット仏教と日本の仏教の根本は同じであり、それぞれの道を極めた聖者たちの境地から見れば、両方の間には何の違いもないはずです。まずこの点を、大前提として確認しておきましょう。</p> <p> そのうえで、一般的なレベルから見るならば、思想哲学や実践修行の面に於て、チベット仏教と日本の仏教はかなり異なった様相を呈しています。それを私なりにまとめ、次の四点を指摘しておきましょう。</p> <p> 1. チベット仏教は、インド仏教の流れを直接受け継いでいます。サンスクリット(梵語)の原典を−漢文よりも−正確に翻訳し、思想哲学や実践修行の面でも、インド仏教の伝統を忠実に踏襲しています。<br/> 2. チベット仏教には、中国や日本へ伝わっていない教えが数多くあります。中でも、最高の思想哲学である中観帰謬論証派、及び最奥義の実践修行である無上瑜伽タントラの両者を擁する点は、チベット仏教最大の特色です。<br/> 3. 仏教には、例えば小乗・大乗・密教といった具合に、一見相互に矛盾するような教えが数多くあります。チベット仏教では、「道次第」に基づいて、それらの教え全てを整合性ある教理体系にまとめあげ、実践の指針を提示しています。<br/> 4. お釈迦様は弟子たちに、自らよく考えて教えの中身を吟味し、その後で初めて教えを信奉するように強く戒めています。チベット仏教では、こうしたお釈迦様の戒めを肝に銘じ、盲信や実践至上主義を排し、明快な論理による思考を重視しています。 </p> <p> 以上四点の特色をよく考えれば、チベット仏教は、「現代の社会に生きる人たちにこそ、ふさわしい宗教だ」といえると思います。その理由を、これから少し吟味してみましょう。</p>
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