<font><b>2.「もののけ姫を読み解く」より抜粋<br/><br/> 「古代の文化といってもそう簡単に説明できるようなものではないんです。<br/><br/> 映画の冒頭に蝦夷の村が出てくるんですが、なぜ蝦夷かというと、僕は西国の人間ではなく、関東の人間で、多分、自分の中に蝦夷の血が濃厚に流れていると思 うんです。鼻の穴の格好とか色々なものを見るにつけ、ずっとそう思ってきた。<br/><br/> だから、蝦夷に近い日本人として-日本という国は近代国家になっていく過程で色々変化していくのだけれど・・・自分達の重要な先祖である蝦夷という民族 を、ただの蛮族と考えるのは間違いと思っているわけで、どういう暮らしをして、どういう姿形をしていて、どういう歌を歌っていたか、というようなことを夢 見るのが結構、好きなんですよ。好きな道楽といいますか。<br/><br/><br/> 大和朝廷の征夷大将軍、坂上田村麻呂にアテルイという蝦夷の最後の王が殺され、一族は服属する。その後、その末梢の阿部氏が朝廷軍に勝った「前九年の役」 や、同じく蝦夷の末梢で、清原氏という、平泉の藤原三代の元になる一族の、一族間同士の争いを源氏が鎮圧する「後三年の役」が起こる。<br/><br/> 蝦夷は最後まで中央政府に反乱を起こした民族なんです。初めは大和朝廷、それから鎌倉 <br/> 幕府へと相手は変わるわけですけれど。<br/><br/> このように、かつての日本の東の方は込み入っていて蝦夷だけでなく、色々な国が日本にはあったということです。<br/><br/> さらにもっと前には、例えば、大和朝廷にできた王朝があり、それ以前にも北九州に王朝があったり、東北の方は東北で別の王朝があった。出雲にもあったし、 吉備にもあった。<br/><br/> いたる所に国々があって、それが最終的に、古代に大和朝廷の下に統一されるのですが、その時でも、東北の秋田から岩手とか、津軽などには別の王国があっ た。<br/><br/> 王国というのがふさわしいかどうかわからないけれど、ちゃんと国があって、それぞれの文化があったのです。それがなんとなく、ぜんぶ壁に塗り込められたよ うになって、よく判らなくしまったのですね。<br/><br/> だから日本の歴史っていうのは面白くない。色々な人たちがいて、そこで色々なことがあって、勝ったりも負けたりもしたけれど、そういうことを経て今日があ るのだ、という考え方の方がずっと豊かになる。<br/><br/> そういう意味からすると、現存する蝦夷の姿というのは絵描きがいい加減に、ほとんどわけもわからず、鍾と鬼が混ざったように描いている。<br/><br/> 青森県の「ねぶた」などに出てくる、坂上田村麻呂がアテルイをやっつけている絵なんかでは、アテルイはまさに鬼なんですよ。」<br/><br/><br/> 「僕は、蝦夷も含めて日本人というものを考えたい。<br/><br/> 大陸系の顔の人もいるし、朝鮮系の顔の人もいる。それから南方系の、僕の鼻みたいな形をしている、インドネシアにいっぱいいるような人もいる。そういう人 間たちを含めて、日本というのは出来上がっている。<br/><br/> 日本の原形というのは、米や稲だけでなくて、色々な所で色々な事が始まって、それらがちゃんと基調をなして、全部消えるのではなく、あるものは残りながら 今の習俗が決まっているんです。<br/><br/> 話を蝦夷にもどすと、彼らは同じ照葉樹林文化の、ブータンなどに住む人たちと似た格好をしていると、僕は道楽で思っています。映画の冒頭に、蝦夷の三人娘 が出てきますが、傘を被って、黒っぽい着物を着て、そこに赤い帯がついている。本当は刺繍でつけたい位なんですが、そんな細工はアニメーションでは難しい から、帯をつけただけですけど。その三人娘を実は、一番気に入って <br/> いたりしてましてね(笑)。<br/><br/> それはタイなどの山岳地方の焼畑をやっている人たちの格好なのです。脚半をつけて手甲をつける姿は、ブータンなんかもそうですね。王様だってドテラに脚半 を履いたりしています。お米は、ジャポニカ種の粘りの強いのが好きですしね。<br/><br/> そういう共通性があって、本当によく似ているのです。」</b></font>
— <a href="http://homepage3.nifty.com/mana/miyazaki-mononoke-qa1.html" target="_blank">もののけ姫QA1 なぜアシタカは室町時代の蝦夷なのか</a> (via <a href="http://nakano.tumblr.com/" class="tumblr_blog" target="_blank">nakano</a>) (via <a href="http://tiga.tumblr.com/" class="tumblr_blog" target="_blank">tiga</a>)